高知学101 最長の過疎 伊尾木川を源流まで-後編 別役へ

1. 明夜から上流へ

 まだまだ岩石が転がり、土砂の堆積も続きますが、次第に量は少なくなります.

(昼休み)

 折柄昼休みで、作業員が網を手に魚を探っています.平常なら河原は鮎釣りの人で賑わうのですが.

(落ちた橋から)

 橋が落ちて対岸に行くことはできません、下の流れは澄んでいます.急流で水嵩が多いから濁りの解消が早いのです.

2.山上の集落

        (山上の集落はどこに)

 かつては河口から源流域まで森林鉄道が敷かれ、さらに横荒川に支線もありました.大型ダンプの往来が少なくなり、道は次第に落ち着いてきますが、狭くもなります.

(
(国土地理院 1:25,000地形図、「赤城尾山」
平成20年10月1日発行より.黄色は走行中の道路)

 地図を見ると天ノ郷は標高800mですが水田や畑もあり、まさしく別天地のように思えます.行ってみたい気はしますが、もう住人は無いでしょうし、点線の徒歩道もおそらく廃道で、草木を掻き分けないと到達できないでしょう.

 なぜこんな高いところに住んだのか.それは林業、炭焼きの働き場所が山の上にあったからです.

(川上側から見た川成集落.右に分かれている林道を上ると山上の集落近くに達するのですが)

3.最後の集落

         (別役公民館)

 付近一帯は携帯の圏外です.公民館は使われていませんが、非常の連絡に備え小窓を開けて公衆電話がかけられるようになっています.

(土居-最後の集落)

 別役土居が最後の集落です.元は河道がなく岩石の間を流れるままになっていましたが、谷を削って流路がつくられています.パイプを通る山からの水も加わり、流れの轟音が辺りに響いています.源流近くでこれですから、山がいかに大量の水を含んでいるかがわかります.道路にもあちこちで水が流れています.

(アメゴの養殖)

 人の姿が見えたので訪ねました.ご夫婦でここでアメゴの養殖をしています.市は衛星電話機を貸しているそうです.

 お聞きすると、前編で記した入口の大井からここに至るまで、住人はいま4人ということです.ここに2人だから、ほかのどこかに2人.

 以前に出会った、90を過ぎて色白でなおかくしゃくとしたご婦人、これから鮎釣りにでかけるというその老息子、育てている椎茸をサルがむしって困ると話していたご夫婦、みんなどうしたのでしょうか.地図上ではこの間の集落が19に上るのですが.

4.駒瀬越

(駒瀬越から)

 これから先、徳島県に至る峠道は通れるかどうかお訊きすると、三日前に通ったので可能であろうとのことでした.

 屈曲を繰り返して400m上り、1,050mの駒瀬越に至ります.下に土居の集落が見えます.この谷を雨雲がやってきて大量の雨を降らすのです.

(駒瀬の山林)

 辺りの急傾斜の山は植林した木々で覆われています.一本一本すべてを人の手で植えて育てたのです.

 トンネルを抜けて徳島県に入ると、1,400m級の山々で遮られので、もう災害個所はありません.ただし人家もありません.半分くらいが舗装のないダート道で、下りに下って、高知と徳島を山間で結ぶ195号線に出ます.

-おわり- 

(2020年10月28日 初版)     (2022年4月1日 改訂版)

高知学100 最長の過疎 伊尾木川を源流まで-前編 明夜へ

1.伊尾木川

 伊尾木川の河口は高知市と室戸岬の中間にある安芸市です.伊尾木川沿いの最奥の集落まで50kmありますが、流域はすべて安芸市になっています.最奥まで達して標高1,050mの駒瀬峠を越えると徳島県に入ります. 

             (花の集落)

 市街を出ると次第に平地が狭まり山に入ります.昔は川に沿って奥地まで森林鉄道が敷かれていて、今も橋梁の跡を見ることができます.

2.豪雨の被害

 高知は鹿児島、宮崎と共に年間降雨量が3,000mmになる日本の多雨地域です.中でも伊尾木川に隣接する魚梁瀬は、年間4,000mm、三日間で1,300mmの記録があるのです.太平洋の湿った大気が直接山に吹き込んで豪雨となります.一方、魚梁瀬の安田川、奈半利川は山間で屈曲して雲を遮りますが、伊尾木川は山の中をほとんど直線的に流れているので、湿度の高い空気が山奥の源流まで一気に達します.

          (河道の掘削)

 2018年7月の西日本豪雨では、急傾斜の山肌は崩れ、河岸や路肩は崩壊し、流出した土砂が川を埋め尽くしました.重機が動き、復旧作業が続きます.掘削してつくった流れの両側はすべて流されてきた土砂なのです.

3.大井

                (大井)

 安芸市内から17kmのところが大井です.ここ迄は安芸市のコミュニティバスが日に3回運行され、率直に言えば安芸市の居住領域はここ迄なのです.欄干には大きな凹みがあります.車がぶつかったにしては大き過ぎます.しかし上流は右だし、集落が浸かった様子はありませんから、何かの拍子に大きな石が跳ね上がったのかもしれません.

             (伊尾木川ダム湖)

 伊尾木川ダムに出ます.左奥が堰堤で、本来はここが満々と水を湛えるダム湖なのですが、以前から土砂が堆積しダムの用が果たせなくなっていました.今回さらに堆積が増え、水はほとんどありません.どうするのか、土砂の上で測量を行っています.

5.古井

 ここから先、地図を見ると、古井、明夜(あきよう)、伊田渕、島、影野、スドウ、川成(こうなろ)、トベリキなどの集落があり、最後が別役土居になります.

            (古井の集落)

 沿道では次第に廃屋が目立ちます.

           (旧古井小中学校)

 対岸に廃校になった古井小中学校が見えます.鉄筋の校舎、可愛らしい体育館と共に教員の宿舎が並んでいます.山奥から来る生徒の寄宿舎もあったようです.もっと昔には離れた山の上に分校もあったし、この沿道に郵便局もありましたが今は消滅しています.

             (明夜の集落)

 しかし廃屋ばかりではなく、今も住まわれている家もあります.

           (路肩の工事)

 至る所で工事が行われていて、時間制限があって進行は捗りません.住民は少ないかもしれませんが、林業にとって必要な産業道路です.

つづく)

(2020年10月25日 初版)    (2022年4月1日 改訂版)